朝日新聞夕刊「窓 論説委員室から」 2013年2月21日(2面)

クラスでいじめを見たら—。

小学生から中学生へ成長すると、「止めようとする」子は減り、「何もしない」子が増える。厚生労働省のそんな調査結果がある。

いじめが増えるのも中学に上がるころだ。この年代の子どもたちに、傍観者にならないよう教えることがいじめを減らす鍵の一つだろう

NPO法人、湘南DVサポートセンターの「スクールバディ」は、まさにそんな目的にかなう取り組みだ。中学を中心に神奈川県や東京都などの約20校で導入されている。

ひとを傷つけずに自分の気持ちをきちんと伝える方法を、みんなで考える。そうした授業を5回した後、バディを募る。放課後に級友や下級生の相談に乗るリーダー役だ。

手を挙げた子には放課後に8回の研修がある。部活動との両立は大変だが、それでもクラスの1割か2割が希望するそうだ。「クラスに何人かいれば全体をひっぱってくれる。即効薬ではないが、じわじわ効いてくる」と理事長の瀧田信之さん。

バディには「暴力や恐喝のような犯罪行為は大人にすぐ報告。解決するのは大人の役割だから自分で解決しようとしなくていい」と教える。

教科書で道徳を教え込むより、困っている仲間への寄り添い方を具体的に手ほどきするほうが、子どもの役に立つと思う。

(各務滋)