仲間の存在が支えに
schoolbuddy

 

家庭や地域で傷ついてきた子どもたちを大勢見てきた。ほとんどの子は身近な大人から暴力を学び、暴力はコミュニケーションの一つだと信じこまされてきた。まだ10代の思春期の子どもたちである。話を聴いてもらいたい、気持ちを理解してもらいたいと必死に仲間や先生たちに気持ちをぶつけているのである。

不安や怒りを抱えた子どもたちに「大丈夫!」「無理しないで!」「今の自分のままでいい!」という思いを私たちの「いじめ防止プログラム」で伝えたい。
いじめが存在するクラスに入っていくと、感じるのは張り詰めた雰囲気ではなく、ある種のしらけた空気感だ。休み時間、皆触れ合ったり、大声で笑ったりして楽しそうに遊んでいる。
一見、仲が良さそうに見える。だが、支配者と被支配者の関係があり、周囲の子どもは暴力が起きても止められず、自分を責めながら無関心を装いながら苦しんでいる。誰もがいじめ、暴力の輪に関わっている。
いじめ防止プログラムは5時間の授業でのワークショップも大切だが、受講した子ども自身が気付き、居心地の良く、安心して通える学校を作るために行動することが目標だ。
既に多くの子どもたちが行動に移した。そうした子どもたちを私たちは、「スクールバディ」と呼んでいる。「バディ」は、「仲間」を意味する。バディ希望者には放課後に8時間の心理学のトレーニングを受けてもらう。相談を受けるに当たっての準備である。
ある学校で、生徒から廊下で呼び止められ、部活動に関するトラブルの相談を受けたことがある。当然、部活顧問の先生や担任の先生に相談したか確かめたが、誰にも相談していないという。大ごとになることを恐れ、教職員ではない私に声をかけたらしい。
この学校には、スクールバディを務める生徒がいる。そこで、先生に相談したくないなら、スクールバディに相談してはどうかと聞いてみた。その子は「バディの存在は知っているし、彼らに相談すれば味方になってくれることも知っている。だから今学校に来れているんです」と言った。この子にとってはスクールバディの存在そのものが支えになっていることを知った。
子どもは大きな力を持っている。大人が適切な情報と機会を与えれば、大人の想像をはるかに超える力を発揮することをバディたちが教えてくれた。
個人の思いが集まり、バディとして、学校の中だけでなく、保護者を含む地域の大人たちにも影響を与えている。こんな子どもたちが様々な活動をし、彼ららしい表現方法で「お互いを大切にする」というメッセージを伝え続けてくれることを切に願ってこの連載を閉じたい。

 

湘南DVサポートセンター090-4430-1836(tryton@kodomo-support.org)