笑顔の陰に「心の傷」(日本教育新聞2013年1月14日)

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あと2カ月ほどで東日本大震災の発生から2年となる。2年前のあの日、私は地元の神奈川県藤沢市にいた。震源地からは遠かったが、地震の揺れは大きく、バスだけがかろうじて運行していた。急いで事務所に戻り、テレビの中継を見た。信じられない光景が映し出され、それが現実であることを実感するまで少し時間がかかった。
関東にいた私でさえこう思うなら、東北でこの地震と津波の被害にあった方はどれほど怖かったか。私のような人間の想像を超える。
阪神淡路大震災の教訓の一つは、避難所での女性や子どもへの支援が不十分だったことだという。平成23年3月末、迷いつつ、開催に踏み切ったシンポジウムでは、支援物資を手に、全国から多くの人が集まってくれた。食糧・飲料を1.5トン、女性や子ども用の下着や生理用品を1.5トン届けることができた。

今回の大震災で一番先に頭に浮かんだことは、震災で心に傷を負った子どもたちが半年後、1年後にどのような精神状態になっているのだろうということである。
報道は避難先の住民の姿を一日中追った。あのころは、どんなに被災者達が気丈に振る舞い、皆笑顔で過ごしているかというような報道が多かった。有名タレントが炊き出しに行き、「被災者の子どもたちの笑顔に逆に元気をもらいました」というコメントが続いた。
果たして本当であろうかと被災地で今でも活動を続けているNPOの友人たちと話したことがある。一日中カメラを向けられ、高齢者に食料を配布する元気な小学生の特集もあった。
私も何度か被災地に行った。震災直後、現地では「震災ハイ」といわれる状況が起こっているといわれた。誰もが気丈に振る舞い、苦しさに耐えている、東北には共に支え合う気質があるなどという報道の中で、多くの人が笑顔で元気に振る舞っていた。
心に傷を負った人たちへのカウンセリングを実践してきた仲間たちと話すうちに、心配が芽生えた。子どもたちは、本当は笑顔なんて見せたくなかったのではないか。しかし、親も親戚も、友だちも、先生も、誰もがつらかったので、自分だけを言葉や態度に出していけないことだと思って笑顔を作っていたのではないか。そうであるなら、まるで、家庭内暴力に悩む家庭に育った子どものようではないか。
そこで、現地のカウンセラー仲間と、半年後、1年後を見据えて、彼らが被災体験を上手に吐き出せるようなプログラムを学校で実施できないかと強く考えるようになった。そして、実行に移したのである。次回にその模様をお伝えしたい。

 

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