大人の苦悩が不安うむ (日本教育新聞2013年1月28日)
東日本大震災の翌月、私は岩手県の沿岸部にいた。市職員の支援物資の配達を手伝いながら沿岸部の避難所となっている学校を巡った。どこの体育館も教室もまだ避難してきた人たちであふれていた。
そんな中でも運動部員たちは残されたスペースでランニングなどの基礎トレーニングをしたり、道具の手入れをしたりして過ごし、私にも元気よくあいさつをしてくれた。
訪れた学校の先生方は皆、避難住民の世話役で授業どころではない。
昨年の夏、市の半分が津波で流されてしまった地区の中学校に、いじめ防止プログラムを持って入らせてもらえることになった。運良く、この学校は数百メートル手前で津波が止まり、直接津波の被害はなかったが、この学校も避難所として教室を使っていたので、半年間授業ができなかった。
校長先生は、生徒の心のケアはもちろんのこと、先生方が避難所運営の矢面に立ち、全ての要望もクレームも受け付けて来たので、彼らのケアの必要性も訴えておられた。おそらく多くの悲しみも怒りも受け止めてきたのだろう。
いじめ防止プログラムは、互いを尊重し合う人間関係の構築方法、自尊感情を高めることを考えることが最終目標である。まさに、災害体験、喪失体験をしてきた子どもたちに伝えたいことである。
災害を体験し、親しい人を失うと、時間の経過とともに自分だけ生き残ったことに罪悪感を感じてしまう人がいる。そのような点にも留意し、彼らとコミュニケーションがとりやすい若い指導者を投入した。
授業には、大学生のユースリーダーが大きな役割を果たした。関東でプログラムに参加してきた学生2名、岩手県で活動しているユースリーダー1名、そしてベテランのスクールカウンセラー1名、計5名からなるチームだ。
日曜日に出発し、夜現地でチームは合流し、翌月曜日に4時間の授業を実施するという行程を約1カ月続けた。関東の大学の研究者や関西の企業もスポンサーとして協力してくれた。
子どもたちは関東で授業をするときと変わりなく、皆積極的に参加し、さまざまな本音が出た。
一つだけこれまでとは違うことがあった。家庭の問題である。災害後の大人のストレスが子どもたちをさらに不安にさせているという意見だった。
被災直後、電気が復旧して、いち早く営業を再開したパチンコ店がどこも大人気で、昼間から町外れの大型店の駐車場は満杯だった。家族、友人、仕事を失った大人の辛い姿を子どもたちは敏感に感じ取っていたのであった。
湘南DVサポートセンター090-4430-1836(tryton@kodomo-support.org)
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