つらい「デート」防ぎたい(日本教育新聞2012年10月8日)
恋人の間で起こる暴力行為を「デーティング・バイオレンス」と呼ぶ。最近は、高校生、中学生の間でも問題となっている。
数年前、20代前半の女性が相談に来た。付き合っている彼に蹴られ、手首から肩にかけて骨折し、ギプスをしていた。女性は診断書を持っていた。驚いたのは骨折の診断書の10日後に出された2枚目の診断書だ。下顎脱臼、頸椎捻挫、頸部血腫、顔面打撲などと続いていた。ギプスをしている女性に、「愛している」という言葉と共に、激しい暴力がさらに振るわれたという。
DV(ドメスティック・バイオレンス=家庭内暴力)の加害者の言い分はいつも同じである。「こんな自分にしたのはお前が悪い、暴力をふるわせるのはお前のせいだ」
恋愛関係で、愛情と暴力が混在すると被害者は動揺し、混乱する。友人、保護者、教師など周囲の人が、心配のあまり無理やり引き離そうとして、かえって暴力の深みにはまり、暴力の関係に埋没することがある。
このような事態を避けるために、学校教育の場で、予防講座を設ける動きが広がっている。日本では中学校に始まり、高校、大学で多く実施されている。私たちの団体もそうした講座の開講に協力している。
海外では12~13歳から始まることが多く、18歳までの主に男子生徒向けの10時間程度の自己コントロールプログラムとして実施されている。日本では長くて2時間、多くは50分授業の一コマで実施されることが多い。時間が短いから効果はないのかというと、やはりやらないよりは、やった方がよいに決まっている。
ある大学での統計では、カップル4組に1組の暴力があるという結果もあるそうだ。また、一般のDVでは加害者のほとんどが男性であるのに対して、デーティング・バイオレンスの場合、30%ほどは女子が加害者になることがあるという。
「デートDV」という言葉もあるが、これは和製英語である。私たちは語源のままのデーティング・バイオレンスという言葉を使用している。デートDVという言葉からは、10代の若年層の恋愛の中で起こるという印象が広がり、DVとは違うものであるかのような印象も与え兼ねない。デーティング・バイオレンスは、一般的なDVの初期の段階と捉えている。DV被害者のほとんどが、結婚する前から、つまり恋人関係のうちに暴力を振るわれてきたと証言しているからだ。とても深刻な事態がある。
支援の第一歩は、そばに寄り添い時間をかけて話を聞き、その人が暴力の被害者であると気付く手助けをすることである。私たちは支援に取り組んでいるが、支援せずに済む社会をつくっていきたいものである。
湘南DVサポートセンター090-4430-1836(tryton@kodomo-support.org)
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