学校では身に「よろい」(日本教育新聞2012年11月12日)
いじめ防止プログラムを学校で実施する中で、さまざまな子どもたち、クラス、そして保護者にも出会ってきた。プログラムは全5時間という長い時間を要するが、たいせつなことはどれだけの保護者や地域の大人たちがこの問題に向き合うかということなので、私たちのプログラムは全て公開授業の形をとっている。
学校に興味・関心の高い地域の場合、学年で数十人の保護者が授業を参観する。また、教育委員、民生委員、人権擁護委員、主任児童委員など、日頃から子どもの教育・福祉の活動をされている市民が参加する地域もある。
にぎやかで小学生気分を引きずり、まだまだ成長途上の幼いクラスもあれば、人間関係が硬直し緊張感で誰も何も発言できないクラスと、同じ学校でもクラスによって多様な姿がある。
小学生で人間関係が複雑になり、摩擦や問題が生まれ、それを中学校で表出させることが多い。では、彼らの人間関係だけがいじめを生んでいるのかというと、そうではない。
子どもは人間関係を大人から学んで成長する。その過程で問題解決がうまくいかず、暴力が存在するような環境に育つことが彼らを混乱させ深く傷つけている。その暴力が家庭にあるならば彼らには逃げ場がない。まさにDV(家庭内暴力)と同じである。最も大切にすべき家族間に暴力があるとしたら、幼い子どもがその現実を受け入れるには、感情を押し殺して生きて行くしかない。
「子どもの心が荒れているのは暴力的なアニメやゲームのせい」とする人もいるが、しかし、人間はそれほど単純ではなく、そしてそれほど強くもない。身近な大人(ロールモデル)から多くを学び、どこかでその感情を発散する。それが暴力的に校舎の窓や教師に向かい、妬みやひがみなどで他者を思いやることができず、人を苦しめてしまうという心の構図がある。
私は学校の登下校風景を観察することにしている。暴力的な子やいじめの加害者に加担しているよう子はうつむきかげんで重い足を引きずりながら歩いてくるが、校門をくぐった瞬間によろいを身にまとうように見える。
「今日も一日先生の言うことも聞かず、友達をバカにし、威圧し、強い自分を演じて過ごすんだ」と声が聞こえてくるようだ。しかし、誰にでもそうかというと、そうでもない。彼らは先生方には甘え、本音でぶつかっていかないが、私たち外部講師にはストレートに向かってくる。暴言もあるが苦しさや寂しさを吐露することがある。その時がチャンスである。学校の先生、親や地域の大人たちが共に、その子たちのことを親身に考えていけば子どもたちは、よろいを脱ぐことができる。
NPO法人湘南DVサポートセンター 090-4430-1836 (tryton@kodomo-support.org)
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